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着物の保管は一つじゃない|状況別に正しい方法を選ぶためのガイド

着物の保管の方法

着物の保管で困ったら|呉服店からのヒント

箪笥がある方も、ない方も。
桐の箱、段ボール、最近の便利グッズまで——
その方のご事情に合わせた、現実的な保管の知恵をお伝えします。

「着物を保管したいけれど、うちには立派な箪笥がなくて」「マンションなので桐箪笥を置く場所がない」——当店には、こうしたご相談がよく寄せられます。

結論から申し上げますと、桐箪笥がなくても、着物は十分に良い状態で保管できます。大切なのは「何に入れるか」よりも、「どう扱うか」という考え方そのものです。今日は、ご家庭の事情に合わせた現実的な保管の知恵を、できるだけ具体的にお伝えしてまいります。

着物の保管で本当に大切なのは、立派な箪笥を持つことではありません。湿気と虫、そして光から守ること。この三つの原則を押さえれば、保管の方法はいくつもあります。

保管の大原則——何に入れるかより、何から守るか

着物にとっての大敵は三つです。湿気、虫、そして紫外線。この三つから着物を守ることができれば、収納する箱や家具の種類は、実はそれほど厳密でなくても構いません。

  • 湿気を避ける── 正絹は湿気を吸うとシミやカビの原因になります。風通しの良い場所を選び、除湿剤を活用しましょう。
  • 虫から守る── 正絹は動物性の繊維で、虫が好む素材です。防虫香などを使用し、種類を混ぜないことが基本です。特に古い着物は気を付けて下さい。
  • 光を避ける── 紫外線は色を褪せさせます。直射日光の当たらない場所、できれば暗い場所で保管しましょう。

この三原則を踏まえたうえで、それぞれのご家庭の事情に合った保管方法を選んでいただければと思います。

桐箪笥をお持ちの方へ

お嫁入で持参した箪笥や先祖から受け継いだ箪笥、これからも上手に活用するために

桐箪笥をお持ちの方は、実は大変恵まれた環境にいらっしゃいます。桐は湿度の高いときに膨張して湿気を遮断し、乾燥したときに収縮して空気を通すという、優れた調湿機能を持つ木材です。これは何百年も前から、着物の保管に最も適した家具として重宝されてきました。

その昔、女の子が生まれたら「庭に桐の木を植える」という習慣もありました。桐という木はそれほど高価で箪笥にするには性能に優れた点があったのです。

📋 桐箪笥を活かすための工夫

引き出しに敷紙を── 箪笥の底に和紙や晒木綿を敷くと、湿気や摩擦から着物をさらに守れます。

たとう紙はこまめに交換── 桐箪笥があっても、たとう紙が古くなれば湿気を含みます。五年から十年を目安に交換しましょう。

引き出しは時々開けて空気を通す── 桐箪笥は優秀ですが、完全に締め切ったままでは効果が半減します。月に一度ほど引き出しを開け、空気を入れ替えてください。

古い箪笥は専門家に状態を見てもらう── 長年使われた桐箪笥は、湿気を吸いすぎて本来の機能が弱っていることもあります。気になる場合はご相談ください。

*当店に持ち込まれるお着物のたとう紙は、カビていることが多いです。お着物にそのまま触れている状態です。たとう紙は処分して、着物を一度干してから、風呂敷に入れてお持ちいただく事をおすすめします。

箪笥をお持ちでない方へ——桐の箱・収納ケースという選択

マンション暮らしや住宅事情でも、十分な保管はできます

最近は住宅事情から、桐箪笥を置くスペースがないというご家庭が増えています。それでも、決して諦める必要はありません。桐の特性を活かした収納箱や、適切に管理されたプラスチックケースでも、十分に着物を守ることができます。

プラスチックケースを使う場合は、湿気がこもりやすいという欠点を補うために、除湿剤を必ず併用し、月に一度は蓋を開けて空気を通すことを心がけてください。それだけで、桐箪笥に近い状態を保つことができます。

段ボールでの保管について——できること、避けたいこと

「とりあえず段ボールに」という方へ、正直なお話

引越しや実家の整理などで、一時的に段ボールに着物をしまっているという方も少なくありません。これについて、正直なところをお伝えします。

⚠ 段ボール保管で避けたいこと

✗湿気の多い場所(押し入れの下段、床に直置きなど)に置く

✗長期間(一年以上)そのままにしておく

✗たとう紙を使わず、段ボールに直接入れる

✗防虫剤を入れずに密閉する

◎ あくまで一時的な保管として

✓たとう紙に包んだうえで段ボールに収める

✓防虫剤・除湿剤を必ず入れる

✓湿気の少ない、風通しの良い場所に置く 高い場所に

✓できるだけ早く、桐箱やケースへ移す

段ボールは紙そのものが湿気を吸いやすく、また虫が侵入しやすい構造でもあります。どうしても段ボールでの保管が必要な場合は、あくまで「仮の措置」と考え、半年から一年以内には桐箱や適切なケースに移していただくことをお勧めします。長期間そのままにしておくと、湿気やシミ、虫食いのリスクがかなり高くなります。

あると便利な保管グッズ

日々の管理を楽にする、ちょっとした道具たち

グッズ役割と使い方のポイント
たとう紙着物一枚を包んで湿気から守る和紙。五年〜十年を目安に交換。窓付きのものは中身が分かりやすく便利です。中紙のあるたとう紙に(和紙)
着物用ハンガー着用後、すぐにしまわず半日〜一日掛けておくことで湿気を飛ばせます。専用の衣紋掛けタイプがしわになりにくくお勧めです。
除湿剤(シート・据え置き型)着物に直接触れないよう、たとう紙の外側や引き出しの隅に設置。湿気を吸ったら定期的に交換しましょう。
防虫剤必ず一種類に統一すること。複数の種類を混ぜると化学反応を起こし、着物を傷める原因になります。当店では、防虫香をおすすめしています。
着物専用の収納袋(不織布)一枚ずつ仕分けて管理しやすく、出し入れの際に他の着物に影響を与えにくいのが利点です。
湿度計収納場所に一つ置いておくと、湿度の変化が一目で分かり、虫干しのタイミングを判断する目安になります。

最近は通信販売などでも便利な保管グッズが手に入りやすくなりました。とはいえ、グッズに頼りすぎず、年に一度の虫干しという基本を忘れないことが、何よりの保険になります。

収納場所そのものの選び方

どんな入れ物を使うかと同じくらい大切なのが、「どこに置くか」という場所選びです。

  • 床からは少し離して── 床に直接置くと湿気の影響を受けやすくなります。すのこや台を使って、わずかでも床から離すと安心です。
  • 外壁に面した場所は避ける── 外気の影響を受けやすく、温度差で湿気が発生しやすい場所です。できれば部屋の中央に近い場所を選びましょう。
  • 押し入れの場合は上段が安心── 湿気は下にたまりやすいため、上段の方が比較的乾燥しています。下段を使う場合は、すのこや除湿剤での対策をより念入りに。
  • クローゼットなら奥行きと換気に注意── 洋服と一緒に収納する場合、湿気がこもりやすいので、扉を時々開けて換気をする習慣をつけてください。

女将としての視点

「桐箪笥がないから、もう着物の保管は無理かもしれない」——そうおっしゃって肩を落とされる方に、何度もお会いしてきました。けれど、それは大きな誤解です。

桐箪笥は確かに優れた道具ですが、それがすべてではありません。湿気と虫と光から守るという原則を理解していれば、桐の収納箱でも、適切に管理されたプラスチックケースでも、着物は十分に良い状態を保てます。

大切なのは、立派な家具を持つことではなく、年に一度の虫干しを欠かさないこと、気になることがあれば早めに専門家に相談することです。住宅事情は時代とともに変わっていきますが、着物を大切に思うお気持ちさえあれば、保管の方法はいくらでも工夫できます。

当店では、ご家庭の状況に合わせた保管方法のご相談も承っております。「うちの場合はどうしたらいいか」と迷われたら、どうぞ遠慮なくお聞かせください。

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着物の保管に「正解」は一つではありません。桐箪笥があってもなくても、それぞれの暮らしの中で、できる工夫を重ねていただければ十分です。何より大切なのは、しまったままにせず、時々は箪笥や箱を開けて、着物と向き合う時間を持っていただくことだと思います。

「うちには立派な箪笥がなくて」と恐縮されるお客様に、私はいつも「それで大丈夫ですよ」とお伝えしています。大切なのは家具の立派さではなく、着物への向き合い方そのものです。

保管の方法に迷われたとき、虫干しの時期が分からないとき、久しぶりに広げてみて何か気になることがあったとき——どんな小さなことでも、どうぞお気軽にご相談ください。ゆっくりお話を伺います。

保管のご相談、お気軽にどうぞ

箪笥がある方も、ない方も。
今回のコラムが皆様のお着物ライフの手助けとなることを願っております。
たとう紙を見て、黄色いシミやカビが発生している場合は、中のお着物も同じくカビが発生しています。 見付けられた場合は、早い目に着物を陰干しして、たとう紙は処分してから当店又は専門店にお持ち下さい。                   

大切な一枚を未来へつなぐために、着物文化の背景と想いを綴った記事もあわせてご覧ください。

着物文化を次世代に残すということ|奈良の呉服店としての使命

長く着続けるためのお直しや仕立て直しについても、詳しく解説しています。

「着物の着継ぎ」は、技術で叶います|奈良の老舗呉服店の強み

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着物クリーニングで失敗しない為の完全ガイド|料金・種類・事例・注意点を総まとめ【奈良】

絹の特性についての詳しい記事です、参考になさって下さい。

たとう紙はいつ交換する?|着物を守るための正しい交換時期と見分け方
着物は素敵だけれど、どうしたらいいの?管理の仕方は?
何から始めればいいのか、さぁ困った。
皆さんお着物を日常にお召しになられないのでこんな疑問は当たり前のことです。
どうぞご相談下さいませ。一緒に考えさせていただきます。
呉服専門店は、そんな皆様の道先案内人となって差し上げます。

奈良県の北西部近鉄線学園前駅徒歩2分。
閑静な高級住宅街で有名な学園北のお屋敷街の中に
ひっそりとたたずむ知る人ぞ知る隠れ家呉服店です。

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