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着継ぎに向く着物、向かない着物|老舗呉服店が解説

灰藤色地に葛の葉・色紙散らし模様の訪問着|染と呉服はっとり

― すべての着物が「次の世代向き」ではありません ―

「この着物、娘に残せますか?」

この質問に、無条件で「はい」と答える店は信用が出来ないかもしれません

それが現場の実感です。

着物には、

着継ぎに向くものと、

その代で役目を終えるものが、はっきり存在します。

着継ぎに向く着物の条件

まず、次の条件を満たす着物は、着継ぎに向いています。

上質な正絹であること
 化繊やウールは、時間と共に劣化します。世代越えは現実的ではありません。

柄が古典的・普遍的であること
 吉祥文様、四季の草花、控えめな構図。
 「流行の匂いがしない」ことが最大の強みです。

色が極端でないこと
 強すぎる流行色や個性的すぎる配色は、次世代で着にくくなります。

生地に張りと強さが残っていること
 仕立て直しは、生地が耐えられることが前提です。

一番大切な事は、「本物・ほんもの」である事です。

これを満たす事が大前提となることを是非とも覚えておいて下さい。

代表的なものは、

訪問着、付け下げ、色無地、振袖(古典柄)

このあたりは、条件が整えば着継ぎやすいです。

着継ぎに向かない着物も、確実にある

一方で、残念ながら着継ぎに不向きな着物もあります。

流行性が強すぎるデザイン
 当時は最先端でも、数十年後には「時代が見える」。

加工が過剰な着物
 金箔・刺繍・箔押しが多すぎるものは、劣化が早い。

生地が弱っているもの
 虫食い、ヤケ、繊維の痩せ。
 直せても、長くは持ちません。

無理な仕立て直しを繰り返した着物
 生地には寿命があります。何度も直せばいいわけではない。

ここで大切なのは、
「向かない=価値がない」ではないという点です。

その代で、美しく役目を果たす着物も、立派な存在です。

判断を誤ると、着物は負債になる

「せっかく残したのに、誰も着ない」

これは、美談ではありません。

着継ぎを前提にするなら、

着られる未来が見えるかを冷静に考える必要があります。

・誰が着るのか
・どんな場で着るのか
・今の感覚に合うか

ここを曖昧にしたまま残すと、

着物は“想い出付きの重荷”になります。

本当に大切なのは「選別」

すべて残す。

すべて処分する。

どちらも、「雑」です。

着物の着継ぎとは、

残すものを選び、整え、託すこと

この選別を、

感情だけでやらない。

価格表だけで判断しない。

そこに、呉服の専門家である私たちの知識を加えていただきたいのです。

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