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着物のお誂え完全ガイド|老舗呉服店が教える正しい誂え方

訪問着 流水に四季の花な

反物選びから仕立て上がりまで、現場の知識をすべてお伝えします

「着物を誂える」——この言葉には、既製品を買うとは根本的に異なる重みがあります。
自分のからだの寸法に合わせて反物を選び、和裁士が一針一針縫い上げる。その工程を経て生まれた着物は、世界にただ一枚、あなたのためだけに存在する着物です。
しかし「誂えたい」と思っても、何から始めればよいか、どう進めるのか、どこに注意すべきかがわからず、踏み出せない方が多いのも事実です。呉服店に相談すると、反物・寸法・八掛・仕立て・紋入れ……と専門用語が次々と出てきて、圧倒されてしまうこともあるかもしれません。
この記事では、奈良で長年誂えの仕立てに携わってきた老舗呉服店が、誂えの流れ・寸法の考え方・反物選びの実務・仕立ての種類・費用の内訳・納期管理まで、現場の視点から余すことなく解説します。この一記事を読めば、誂えの全体像が明確に見えるようになります。

この記事でわかること
・ 誂えと既製品・レンタルの本質的な違い
・ 反物(たんもの)の選び方——種類・産地・格の見方
・ 採寸の全項目——何をどう測るかの完全解説
・ 仕立ての種類(手縫い・ミシン・海外仕立て)と使い分け
・ 八掛・胴裏・芯地の選び方と着姿への影響
・ 紋入れ・湯のし・その他の付帯工程の意味
・ 費用の内訳と予算の組み方
・ 納期管理——いつまでに頼めばよいか
・ 仕立て上がりの確認と長く使うためのお手入れ

誂えとは何か——既製品・レンタルとの本質的な違い


「誂え」の定義


誂え(あつらえ)とは、反物(着物の生地・布地)を選び、自分の寸法に合わせて和裁士に仕立ててもらうことです。洋服でいえばフルオーダーのテーラードスーツに相当しますが、着物の誂えはそれ以上に深い意味を持ちます。
着物の誂えは単なる「サイズ調整」ではありません。反物の選択から始まり、色・柄の顔映りの確認、八掛(裏地)の色選び、紋の種類・数の決定、仕立て職人への細かい指示——これらすべてを含む、トータルなものづくりのプロセスです。

誂え・既製品・レンタルの三択

項目誂え既製品レンタル
サイズ完全に自分専用規格サイズ規格サイズ(調整に限界)
着姿の美しさ△〜○(寸法次第)△(他人用の寸法)
着崩れのしにくさ△〜○
生地・柄の選択完全自由完成品から選ぶ在庫から選ぶ
受け継ぎ◎(世代を超えて)○(寸法直しが必要な場合も)×(返却するもの)
費用高め中程度低め〜中程度
納期2〜4ヶ月即日〜数週間当日または数日前
愛着・唯一性

誂えが圧倒的に優れている点——着姿の差


誂えの最大の価値は「着姿の美しさ」です。人の体はそれぞれ異なります。同じ身長でも肩幅・裄丈・バスト・ヒップ・腰高(ウエストから腰の距離)は一人ひとり違います。既製品はこれらをすべて「標準値」で一律に作るため、どこかで無理が生じます。
誂えた着物は、着付けの前から体に沿う形になっています。着付けたとき自然に衿が立ち、裾がきれいに広がり、おはしょりが美しく折れる——これは誂えでなければ再現できない着姿です。着物経験者が「やはり誂えは違う」と言うのは、この一点に集約されます。

誂えの着物を初めて着たとき「なぜこんなに着やすいのか」と驚かれるお客様は少なくありません。それまで既製品や他人サイズのレンタルを着ていた方が、自分寸法の誂えを着ると、まず着崩れのしにくさと着心地の違いに気づきます。

反物の選び方——種類・産地・格・状態の見方


誂えの出発点は反物(たんもの)選びです。反物とは、着物一枚分の生地のことで、通常12〜13メートルの長さで反(たん)という単位で販売されます。反物選びは誂えの中で最も時間をかけるべき工程であり、完成した着物の品質を最も左右する選択です。
反物の種類と用途
着物の用途によって選ぶ反物の種類が変わります。「何のための着物を誂えるか」を最初に確定してから反物を選びましょう。

反物の種類主な用途特徴・注意点
染め反物(友禅・型染めなど)訪問着・振袖・小紋白生地を後から染める。色・柄の自由度が高い
織り反物(紬・西陣織など)紬・帯・普段着先染めした糸で織る。丈夫で独特の風合い
白生地(はくじ)色無地・喪服・仕立て後に染める着物仕立て前または後から染める。無地・地紋あり
絵羽反物訪問着・振袖・留袖仮絵羽(仮仕立て)で柄のつながりを確認してから仕立て直す

反物の幅と着物の仕上がりの関係

反物には「並幅(なみはば)」と「広幅(ひろはば)」があります。この幅の違いが、仕立て上がりの着物の身幅に直接影響します。

  • 並幅反物 幅約36〜38cm。通常の着物に使われる標準的な幅。身幅の調整は縫い代の取り方で行う
  • 広幅反物 幅約42〜50cm以上。体格の大きい方・裄丈が長い方の誂えに向く。並幅では生地が足りない場合の選択肢

体格が標準より大きい方(特に裄丈が長い・身幅が広い方)は、並幅反物では生地が足りずに誂えできない場合があります。呉服店で採寸した上で、必要な反物の幅を確認してから購入しましょう。

反物の「目付け」——プロが確認すること

反物を選ぶとき、呉服店のプロは「目付け(めつけ)」と呼ばれる確認作業を行います。これは反物の品質・状態・仕立て適性を見極める工程で、一般の方が見落としがちな点を専門家の目で確認します。

  • シミ・染みムラの確認 反物を広げて全体を確認。染めの工程でできた微細なムラや、保管中のシミがないかをチェック
  • 糸の引きつり確認 織りの反物は糸の引きつりや織りキズがないかを確認。仕立て後に目立つ位置に来ないよう柄の取り方を計算する
  • 耳(ミミ)の状態 反物の端(耳)の縫製・整え方が丁寧かどうかは生地の品質の指標になる
  • 縮み率の確認 正絹は水洗い・湯のしで縮む。縮み率を考慮した上で必要な生地量を計算する
  • 柄の取り方の計算 縫い目で柄がどこに来るか、身丈・袖丈に合わせて柄の位置を事前に計算する

反物の柄の取り方は、熟練の和裁士と呉服店スタッフが協力して計算します。「この柄を背中の中心に持ってきたい」「衿元に花が来るようにしてほしい」など、柄の位置の希望があれば誂えの段階で伝えてください。

採寸の全項目——何をどう測るかの完全解説

誂えにおける採寸は、着物の仕上がりを決定する最重要工程です。採寸の精度が着姿の美しさと着心地を左右します。「どの寸法を・なぜ・どう測るか」を理解しておくと、採寸時の立ち会いがより意味のあるものになります。

採寸の10項目と意味

寸法の名前測る箇所着物への影響と注意点
身丈(みたけ)肩山〜裾着物の全体の丈。身長±数cmが基準。おはしょりの出方に影響
裄丈(ゆきたけ)背中心〜手首くるぶし袖の長さと肩幅の合計。個人差が最も大きい寸法。既製品が合わない方が多い
袖丈(そでたけ)袖山〜袖先振袖は袖丈が格式を決める。訪問着・留袖は用途に合わせた標準寸法がある
袖幅(そではば)袖山〜袖口の幅裄丈から肩幅を引いた数値。裄丈と一体で決める
肩幅(かたはば)背中心〜袖山体の肩幅に合わせる。広すぎると袖が落ちる・狭すぎると肩が窮屈
前幅(まえはば)おくみ〜脇縫い前見頃の幅。ヒップ寸法から算出。着付け時の重なりに影響
後幅(うしろはば)背中心〜脇縫い後ろ見頃の幅。前幅と合わせて着物全体の身幅を構成
胸囲(むなまわり)バストの最大周囲身幅計算の基準。胸の大きい方は身幅に余裕を持たせる
ヒップ腰の最大周囲前後幅の計算基準。着物の身幅はヒップ÷4が目安
着丈(きたけ)首の付け根〜床立った状態での実測。おはしょりを考慮して身丈を決める基準

採寸で最も重要な「裄丈」の正確な測り方

着物の誂えで最も個人差が出るのが裄丈です。既製品で「袖が短い」「袖が長すぎる」と感じる方のほとんどが、裄丈の規格から外れています。

正確な裄丈の測り方は、背中の中心(首の付け根下・第七頸椎の下)から、肩の上を通り、手を自然に下げた状態で手首のくるぶし(尺骨遠位端)まで測ります。

注意点として、腕を水平に上げた状態で測ると数値が変わります。着物は腕を下げた自然な状態で着るため、腕を自然に下ろした姿勢での測定が正確です。一人で測ると誤差が出やすいため、必ず二人以上で測ることをおすすめします。

採寸値と着物寸法の変換——プロが行う計算

採寸した数値がそのまま着物の寸法になるわけではありません。着物には「縫い代・きせ(縫い目を隠すための折り返し)・お端折りの分量」などが加わり、採寸値から着物の仕立て寸法への変換計算が必要です。

この計算を行うのが呉服店のスタッフと和裁士の役割です。「裄丈68cm」という採寸値があれば「肩幅32cm・袖幅36cm」といった形で着物の各パーツの寸法に分解されます。この計算を誤ると、仕上がった着物が着られないという致命的な問題が起きます。

採寸は「今の体型」で行います。ダイエット・妊娠・体型変化の予定がある場合は必ず事前に伝えてください。「今後やせる予定だから少し小さめに」という注文は禁物です。着物は着時点の体型に合わせて仕立てるのが原則です。

仕立ての種類と使い分け——手縫い・ミシン・海外仕立て

反物と寸法が決まったら、次は「どのように仕立てるか」の選択です。仕立ての方法には「手縫い仕立て」「ミシン仕立て」「海外仕立て」の大きく3種があり、それぞれに特性・価格・適切な用途の違いがあります。

手縫い仕立て——着物の正統な仕立て方

和裁士が一針一針手で縫い上げる仕立て方法です。着物の仕立ての本来の形であり、最も品質が高くなります。

手縫い仕立ての特徴と利点

  • 「きせ」の精度 縫い目を隠すために縫い代を折り返す「きせ」という技法が手縫いでは精密に行える。これが着物の美しいシルエットを作る
  • 「くけ縫い」の弾力性 手縫いには「くけ縫い(くけ)」という着物独自の縫い方があり、生地に適度な遊びが生まれる。この遊びが体の動きに追従し、着崩れを防ぐ
  • 縫い目の強度と柔軟性 手縫いは糸の張りを職人が指先で調整しながら縫うため、生地への負荷が均一で裂けにくい
  • 洗い・解き・仕立て直しの容易さ 手縫いは丁寧に解けば生地を傷めずに解体できる。洗い張り(反物に戻して洗う)・仕立て直しが可能で、長期的な着物の維持に有利

手縫い仕立ての仕立て代目安

着物の種類手縫い仕立て代の目安
訪問着・留袖40,000〜100,000円(八掛・胴裏別)
振袖50,000〜120,000円(八掛・胴裏別)
色無地・付下げ40,000〜70,000円(八掛・胴裏別)
小紋・紬30,000〜70,000円(胴裏別)
喪服35,000〜70,000円(八掛・胴裏別)

手縫い仕立ての費用は、和裁士の技量・地域・工房によって異なります。上記はあくまで目安です。「安すぎる手縫い仕立て」は技量の低い職人によるものか、実際にはミシンを使っているケースもあります。費用の内訳を確認することが大切です。

ミシン仕立て——コストと速さを優先する選択

ミシンを使った仕立ては手縫いより低コスト・短納期で仕立てられます。呉服店によっては手縫いとミシン仕立ての選択肢を提供しています。

  • 費用 手縫いの6〜7割程度のことが多い
  • 納期 手縫いより1〜3週間短縮できることが多い
  • 着姿 手縫いより若干劣るが、普段着・カジュアル使いには十分なレベル
  • 向く着物 小紋・紬・普段着・浴衣など礼装でない着物
  • 注意点 礼装(訪問着・振袖・留袖・喪服)にはミシン仕立ては避けることを推奨

海外仕立て——コスト削減の実態と注意点

一部の呉服店では、中国・ベトナムなどの工場で仕立てる「海外仕立て」を提供しています。コストは国内手縫いの3分の1〜半額程度になることもありますが、品質リスクを正しく理解した上で選択する必要があります。

  • コストメリット 国内手縫いに比べて大幅に費用を削減できる
  • 品質のばらつき 工場・職人によって仕上がりの品質に差がある。くけや縫い代の処理が粗いことがある
  • コミュニケーションの問題 細かい仕様の伝達が難しく、意図と異なる仕上がりになることがある
  • 洗い張りへの対応 海外仕立ての着物は縫い方の違いから、洗い張り・仕立て直しが難しい場合がある

老舗呉服店の見解として、礼装・長く使い続けたい着物・家族に受け継ぐ着物には国内の手縫い仕立てを強くおすすめします。海外仕立ては「一時的な普段着用」に限定する判断が賢明です。

八掛・胴裏・芯地——裏地と芯の選び方

着物の仕立てには本体の生地(反物)だけでなく、裏地と芯地が必要です。これらの選択は着物の完成度・着心地・長持ちに大きく影響しますが、初めての方には見落とされやすい部分です。

八掛(はっかけ)——裾まわりの裏地

八掛とは、着物の裾・前後の下部に付ける裏地のことです。袷(あわせ)の着物(裏地付き)には必ず必要で、着物を脱いだときに見える「着物の顔のひとつ」でもあります。

八掛の色選びの重要性

八掛の色は着物の格・印象・着姿に大きく影響します。八掛の選択は反物選びと並ぶ重要な決断です。

  • 共色八掛(ともいろはっかけ) 着物本体と同系色の八掛。最も格調があり礼装に向く。色無地・留袖・訪問着の礼装に
  • 反対色八掛 着物と対照的な色の八掛。歩いたときにちらりと見える裾の色が個性的な印象を与える。紬・小紋のカジュアルな着物に
  • ぼかし八掛 グラデーションになった八掛。品のある仕上がりで訪問着・付下げに向く

礼装の着物に反対色の八掛を合わせると、着物の格が下がって見えることがあります。礼装には共色または近似色の八掛が基本です。

八掛の素材

  • 正絹八掛 着物本体と素材が揃い、着心地・発色ともに最高。礼装・正絹着物に
  • 化繊八掛 コストを抑えられるが、静電気が起きやすく正絹に比べ着心地が劣る。劣化が早いため長期使用には不向き

胴裏(どううら)——上半身の裏地

胴裏は袷の着物の上半身(胴まわり)につける白い裏地です。八掛が目に見える裏地であるのに対し、胴裏は着物を着ているときには見えません。しかしその役割は重要です。

  • 着心地の向上 胴裏があることで着物が体に沿いやすくなる。表地と肌の間に適度な空気層ができ、着心地が向上する
  • 表地の保護 汗・皮脂が直接表地に触れることを防ぐ。着物の長持ちに貢献する
  • 胴裏の品質 上質な胴裏は白く張りがあり、着用を重ねても黄ばみにくい。安価な胴裏は経年で黄ばみ・脆化が起きやすい

帯芯(おびしん)——帯の仕立てに欠かせない芯

帯を仕立てる場合(帯地から仕立てる場合)、帯の中に入れる芯地(帯芯)の選択も重要です。帯芯の質が帯の締め心地・形状保持・耐久性を決めます。

  • 綿の帯芯(きなり芯) 最もポピュラー。適度なコシと吸湿性があり、締めやすく形が崩れにくい
  • 絹の帯芯 高級品。軽く柔らかで締め心地が最高。礼装の帯に向く
  • 化繊の帯芯 低コスト。ただし蒸れやすく静電気が起きやすい

紋入れ・湯のし・その他の付帯工程

着物の誂えには、仕立て以外にもいくつかの付帯工程があります。それぞれの意味と必要性を理解しておくと、誂えの発注がより的確になります。

湯のし(ゆのし)——仕立て前の必須工程

湯のしとは、反物を蒸気にさらして生地の縮みと歪みを整える工程です。特に正絹の反物は仕立て後に洗いや湿気で縮む性質があるため、仕立て前に湯のしを行うことで「縮み代」を先に出しておきます。

湯のしをせずに仕立てると、初めて着物を洗ったときに縮みが出て寸法が狂う原因になります。正絹の反物を誂える場合、湯のしは必ず行う工程です。

  • 費用の目安 一反あたり2,000〜5,000円程度
  • 期間 1〜3日

紋入れ(もんいれ)

礼装・準礼装の着物には紋を入れます。紋入れには染め抜き・縫い紋(刺繍)・刷り込みなどの種類があり、格と費用が異なります。誂えの段階で「紋を入れるかどうか・何つ紋にするか・家紋は何か」を確定しておく必要があります。

  • 染め抜き日向紋 最高格。礼装に必須。仕立て前または後から入れる。費用:一つ紋10,000〜25,000円程度
  • 縫い紋(刺繍紋) 準礼装〜略礼装。仕立て後から入れられる。費用:一つ紋10,000〜20,000円程度
  • 刷り込み紋 簡易な方法。費用:一つ紋3,000〜8,000円程度

解き・洗い張り(ときあらいはり)——仕立て前の旧い着物の処理

ママ振袖・形見の着物・古い着物を仕立て直す場合、まず現在の仕立てを解いて(「解き」)反物の状態に戻し、洗って整える「洗い張り」を行ってから再度仕立てます。

  • 解きの工程 縫い目をすべてほどき、反物に戻す。丁寧に行えば生地へのダメージを最小限に抑えられる
  • 洗い張り 反物状態で専門の水洗い。汗・皮脂・軽い染みを落とす。縮みも整う
  • 費用目安 解き・洗い張りで5,000〜15,000円程度(着物の状態・素材による)

染み抜き・色かけ——状態改善の工程

古い着物に染みや変色がある場合、仕立て直し前に染み抜きや色かけ(染み部分に色を加えて目立たなくする技法)を行うことがあります。

  • 染み抜き 薬品・水・機械的処理で染みを除去。古い染みほど完全除去が難しい。費用:一箇所2,000〜15,000円以上(状態による)
  • 色かけ(彩色補正) 染みが残る場合に染料で上から色を加えて目立たなくする。費用:範囲・難易度による

状態の悪い着物を持ち込む場合、まず呉服店で「どこまで直せるか」の見立てをしてもらうことが先決です。修復費用が着物本体の価値を上回る場合もあります。専門家の見立てを聞いてから判断しましょう。

費用の全体像——何にいくらかかるかの完全内訳

誂えの費用は「反物代」だけではありません。湯のし・八掛・胴裏・仕立て代・紋入れ・場合によっては染み抜きや帯の仕立て代まで、複数の費用が積み重なります。予算を正確に把握するためには、これら全体を見通した計画が必要です。

誂えの費用内訳(訪問着を例に)

項目費用の目安
反物代(訪問着)30万〜200万円以上(素材・染め・産地による)
八掛(裾裏地)8,000〜50,000円(正絹)
胴裏(上半身裏地)5,000〜20,000円
湯のし(縮み処理)2,000〜5,000円
手縫い仕立て代35,000〜100,000円
紋入れ(一つ紋・縫い紋)10,000〜20,000円
帯(袋帯・仕立て済み)50,000〜500,000円以上
帯芯・帯仕立て代5,000〜15,000円
小物(帯締め・帯揚げ)10,000〜50,000円
草履・バッグ20,000〜200,000円以上

上記のうち「最低限必要なもの」は反物・八掛・胴裏・湯のし・仕立て代です。紋入れは礼装の場合に必要です。帯・小物・草履は後から揃えることもできますが、コーディネートの完成度を考えると同時に相談することをおすすめします。

予算の組み方——老舗呉服店からのアドバイス

誂えの予算を組むとき、多くの方が陥りがちな失敗が「反物代だけで予算を使い切る」ことです。上質な反物を選んでも、仕立て代・帯・小物の予算が不足すると、完成したコーディネートのバランスが崩れます。

  • 反物代:仕立て代=7:3が目安 高価な反物ほど仕立ての精度が問われる。反物の格に見合った仕立て代をかけることが大切
  • 帯は着物の3〜5割の予算を 着物と同等またはそれ以上の帯を合わせると着物全体が引き立つ。帯を省くとバランスが崩れる
  • 小物・草履は予算の1〜2割を 小物は少額でも着姿への影響が大きい。質のよいものを選ぶ

納期管理——いつまでに頼めばよいか

誂えの失敗でよくあるのが「時間切れ」です。「間に合わなかった」「急がせて仕上がりが雑だった」という事態を防ぐために、納期の考え方を正確に把握しておきましょう。

工程ごとの所要期間

工程標準的な所要期間注意点
相談・反物選定1〜複数回の来店急がずに時間をかけてよい
採寸30〜60分薄手インナーで来店を
湯のし1〜3日仕立て前に必ず実施
手縫い仕立て4〜8週間(通常)繁忙期は2〜3ヶ月かかることも
紋入れ(縫い紋)2〜3週間仕立て完成後に依頼
仕上がり確認・補正1〜2週間修正が必要な場合の余裕を

これらを合計すると、相談から着物の完成まで、標準的には2〜3ヶ月かかります。繁忙期(年末・成人式前・卒業式前)は職人の予約が詰まるため、3〜4ヶ月以上必要になることもあります。

用途別の発注タイミング目安

  • 成人式・振袖 着用日の1.5〜2年前。人気の反物は早期に売り切れる場合も
  • 結婚式・留袖 着用日の4〜6ヶ月前
  • 入学式・卒業式・訪問着 着用日の3〜4ヶ月前
  • 普段着・色無地 着用日の2〜3ヶ月前
  • 喪服 急な着用に備え、喪服は早めに準備しておくことを強く推奨。「必要になってから」では間に合わない

喪服だけは「急ぎで」という誂えが最も多い着物です。葬儀は突然訪れます。「喪服の誂えはいつでもできる」と先送りしている方は、元気なうちに準備されることを強くおすすめします。

仕立て上がりの確認——受け取り時に必ずチェックすること

仕立て上がった着物を受け取るとき、その場での確認を怠ると後から問題が発覚することがあります。受け取り時のチェックポイントを事前に知っておきましょう。

受け取り時の確認項目

  1. 寸法の確認:着物を広げて身丈・裄丈・袖丈を実測する。注文値との誤差が1cm以上あれば補正を依頼
  2. 柄の位置確認:注文時に指定した柄の位置に柄が来ているかを確認。特に訪問着の絵羽模様のつながりを確認
  3. 縫い目の確認:縫い目が均一かつ丁寧に縫われているかを確認。ほつれ・縫い目の乱れがないかをチェック
  4. きせの確認:縫い目を覆うきせが均一に施されているかを確認
  5. 八掛の状態:八掛がきれいに付いているか・色が指定通りかを確認
  6. 紋の位置と精度:紋が正確な位置に・指定通りの種類で入っているかを確認
  7. 仮絵羽との照合:絵羽物(訪問着・振袖)は仮絵羽のときと柄の出方が同じかを確認

この確認については、既に呉服店側で行っております。

しかし、気になる点があれば、その場で遠慮なく確認・補正を依頼してください。

信頼できる呉服店は、この段階での補正依頼を対応しております。

誂えた着物を長く使うために——保管とお手入れの基本

丁寧に誂えた着物を一生もの・受け継ぐものとして大切に使い続けるためには、正しい保管とお手入れが欠かせません。

着用後の基本的なお手入れ

  • 着用後はすぐにしまわず、ハンガーにかけて2〜3時間陰干しする(湿気を飛ばすため)
  • 衿・袖口・裾など汚れやすい部分を確認する。染みや汚れがあれば早めに専門店へ
  • アクセサリー・バッグのファスナーが着物に触れないよう注意する
  • 陰干し後はたとう紙(和紙の包み紙)に包んでしまう

保管の基本

  1. 保管場所は湿気の少ない場所(桐のタンスが理想)。プラスチックケースは湿気がこもるため不向き
  2. たとう紙は1〜2年に一度交換する。古いたとう紙は湿気を含んで逆効果になる
  3. 防虫剤は正絹用のものを使い、着物に直接触れないよう注意
  4. 異なる種類の防虫剤を混在させない(変色の原因)
  5. 年に一度は「虫干し」(陰干し)を行い、着物の状態を確認する

専門クリーニングのタイミング

着物の本格的なクリーニングは、着物専門のクリーニング店・呉服店に依頼します。

  • 丸洗い(京洗い) 着物を仕立てたままの状態で洗う。汗・軽い汚れの除去に。1〜2シーズンに一度が目安
  • 洗い張り 着物を解いて反物に戻してから洗う。大がかりな汚れ・黄ばみ・古い染みに対応。仕立て直しも同時に行える
  • 染み抜き 染みを発見したら早めに依頼。時間が経つほど除去が難しくなる

誂えた着物は「愛車」と同じです。定期的なメンテナンスを怠らなければ、何十年も美しい状態を保ち、次の世代に受け継ぐことができます。

奈良の老舗呉服店は、誂えの後も保管・お手入れのご相談を喜んでお受けします。

まとめ——誂えとは「着物との関係を始めること」

着物を誂えることは、一枚の着物を手に入れることではなく、着物との深い関係を始めることです。

自分の寸法で仕立てられた着物は、着るたびに体に馴染み、年月を経るほどに愛着が増します。

その着物が子どもや孫に受け継がれたとき、着物はただの衣装を超えて家族の歴史の一部になります。

  1. 誂えの流れ:相談→反物選定→採寸→湯のし→仕立て→紋入れ→仕上がり確認
  2. 最重要工程は採寸と反物選定。時間をかけて丁寧に行う
  3. 仕立ては礼装・長期使用目的には手縫いが基本
  4. 費用は反物代だけでなく付帯費用(八掛・胴裏・仕立て代など)をトータルで計画する
  5. 納期は余裕を持って。喪服は特に早めの準備を
  6. 受け取り時の確認と、その後の正しいお手入れが「一生もの」を実現する

「誂えてみたい」と思ったとき、どんな段階でも奈良の老舗呉服店へお越しください。

完全予約制にてご相談をお受け致しております。

奈良で着物を誂えるなら|信頼できる呉服店の見極め方
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何から始めればいいのか、さぁ困った。
皆さんお着物を日常にお召しになられないのでこんな疑問は当たり前のことです。
どうぞご相談下さいませ。一緒に考えさせていただきます。
呉服専門店は、そんな皆様の道先案内人となって差し上げます。

奈良県の北西部近鉄線学園前駅徒歩2分。
閑静な高級住宅街で有名な学園北のお屋敷街の中に
ひっそりとたたずむ知る人ぞ知る隠れ家呉服店です。

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