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着物の格 完全ガイド|老舗呉服店が解説

振袖 黒地に五葉の松

正礼装から普段着まで——TPOに合わせた着物の選び方

着物の格とは「その着物がどの場にふさわしいか」を決める基準です。

どれほど高価な着物でも、格を間違えると場に合わなくなります。
逆に、格を理解すれば着物選びで迷うことはなくなります。

着物を選ぶとき、「この着物でいいのかな」という不安を感じたことはありませんか。

結婚式に呼ばれた・お子様の入学式がある・お茶会に招待された——

それぞれの場面にふさわしい着物は何か。訪問着と付下げの違いは何か。

紋は必要か、帯は何を合わせるべきか——

着物の「格(かく)」というルールを是非、知って下さい。

この記事は「着物の格の完全ガイド」です。正礼装から普段着まで、着物のすべての格を体系的に解説します。

また各着物の詳しい解説記事へのリンクも設けています。この記事一本で着物の格の全体像がわかるよに記してみました。どうぞお役立て下さい。

この記事でわかること

  • 着物の格の全体構造——正礼装・準礼装・略礼装・外出着・普段着の5段階
  • 正礼装の着物(黒留袖・振袖・打掛・黒紋付)の使い分け
  • 準礼装・略礼装の着物(色留袖・訪問着・付下げ・色無地)の使い分け
  • 外出着・普段着(小紋・江戸小紋・紬・浴衣)の世界
  • 帯の格——袋帯・名古屋帯・半幅帯のTPO
  • 格を決める要素——紋・染め・織りの関係
  • 男性の着物の格
  • 場面別・格の早見表

着物の格とは何か——なぜルールがあるのか

着物に「格」という概念がある理由は、洋服と同じです。フォーマルな場にTシャツやデニムで行かないように、着物にも「この場にはこの格の着物」というルールが存在します。

このルールは礼儀の表現です。結婚式に出席するとき・お葬式に参列するとき——場の格に合った装いをすることは、その場に対する敬意・主催者への敬意・同席する方への配慮を形にしたものです。

着物の格は、着物の種類・紋の有無と数・帯の種類・素材(染めか織りか)の組み合わせで決まります。同じ着物でも紋を入れると格が上がり・帯を変えると格が変わるという柔軟性も着物の特徴です。

「格を知ること」は着物を制限することではなく、着物を自由に活用するための地図を手に入れることです。格を知れば「何を着ていけばいいかわからない」という不安がなくなり、着物との付き合いが格段に豊かになります。

着物の格の5段階

着物の格は大きく5段階に分類されます。

格の段階代表的な着物使用する主な場面
正礼装(第一礼装)黒留袖・振袖・打掛・黒紋付結婚式(主催者側・花嫁衣装)・重要な式典
準礼装色留袖(五つ紋)・訪問着結婚式(ゲスト)・改まった式典・茶会
略礼装付下げ・色無地(一つ紋)・江戸小紋(一つ紋)入学式・七五三・茶会・改まった食事
外出着小紋・御召・紬(訪問着仕立て)観劇・食事会・美術館・趣味の集まり
普段着紬・木綿・ウール・浴衣日常の外出・稽古・自宅でのくつろぎ

格を決める4つの要素

  • 着物の種類 黒留袖・振袖・訪問着・小紋・紬など、着物の分類そのものが格の基準になる
  • 紋の有無と数・技法 紋なし→一つ紋→三つ紋→五つ紋の順で格が上がる。技法(染め抜き>摺り込み>縫い)でも格が変わる
  • 染めか織りか 一般に「染めの着物(後染め)」は礼装向き、「織りの着物(先染め)」は外出着・普段着向き
  • 帯と小物 どれだけ格の高い着物でも帯が格外れだと全体が崩れる。着物と帯の格は揃える

女将より 「染めの着物は礼装、織りの着物は普段着」という原則は大まかな目安です。綴れ帯のような格調ある織りの帯を礼装に使う例外もあります。ただし紬の着物がどれほど高価であっても、結婚式の正礼装の場には向かない——この基本だけは守ってください。

正礼装——最も格が高い着物

黒留袖(くろとめそで)——既婚女性の最高礼装

黒地の留袖で、裾のみに絵羽模様が入ります。染め抜き日向五つ紋が必須です。比翼仕立て(ひよくじたて)という二重の衿が特徴です。

既婚女性の最高礼装として、結婚式では新郎新婦の母親・仲人夫人・近い親族の既婚女性が着用します。「主催者側の最高礼装」という位置づけです。

  • 合わせる帯 礼装用の袋帯(金銀糸・吉祥文様)
  • 合わせる帯締め・帯揚げ 白または金銀の礼装小物
  • 草履・バッグ 礼装用(金・銀・白系)

NG 黒留袖にカジュアルな帯・小物は厳禁。帯の格が着物の格に届いていなければ、正礼装にならない。

振袖(ふりそで)——未婚女性の最高礼装

未婚女性の第一礼装。袖の長さによって大振袖・中振袖・小振袖の3種があります。

  • 大振袖(袖丈110〜115cm程度) 花嫁のお色直し衣装。最も格が高い
  • 中振袖(袖丈90〜100cm程度) 成人式・結婚式(未婚の親族・ゲスト)。現代では最も一般的
  • 小振袖(袖丈60〜85cm程度) 卒業式での袴との組み合わせが代表的

振袖は未婚女性であれば格の高い場ならどこにでも着ていける万能の礼装です。既婚後は袖を詰めて訪問着として蘇らせることもできます(ママ振袖の仕立て直し)。

詳細記事 ▶ ママ振袖の帯と小物ガイド 振袖を次の世代に受け継ぐための帯・小物の選び方と費用を詳しく解説

打掛(うちかけ)——花嫁の最高礼装

婚礼衣装として小袖の上に羽織る着物です。白無垢・色打掛があり、いずれも花嫁が着用する最高格の婚礼衣装です。婚礼以外で着ることはほぼありません。

黒紋付(くろもんつき)——慶弔両用の最高礼装

黒地に染め抜き日向五つ紋が入った着物です。本来は慶事にも使われた正礼装でしたが、現代では黒共帯を合わせた喪服(弔事)としての使われ方が主になっています。

ただし宝塚歌劇団の正装が黒紋付に袴と定められているように、慶事の最高礼装としての格は今も認められています。

準礼装・略礼装——最も使用頻度が高い着物たち

色留袖(いろとめそで)——紋の数で格が変わる

黒以外の色の留袖です。黒留袖と同じく裾のみに絵羽模様が入ります。既婚・未婚を問わず着用できる点が黒留袖と異なります。

紋の数によって格が変わる特徴があります。

  • 五つ紋の色留袖 正礼装——黒留袖と同格。結婚式での主催者側(未婚の姉妹・いとこなど)に
  • 三つ紋の色留袖 準礼装——結婚式のゲスト・華やかなパーティに
  • 一つ紋の色留袖 略礼装——友人の結婚式・入学式・子供の行事に

女将より 色留袖は紋の数の選択で格を自由に調整できる、最も「使い勝手のよい礼装」のひとつです。一枚持つなら三つ紋をおすすめします。準礼装として使いながら、主催者側に近い場面でも対応できます。一つ紋という考え方もありますが、訪問着を持たれるならば是非三つ紋で。この考え方が格の本質です。

訪問着(ほうもんぎ)——準礼装の代表

裾から上半身・袖にかけて縫い目をまたいで絵柄がつながる「絵羽模様」が特徴の着物です。未婚・既婚を問わず着られる汎用性と、華やかさのバランスが訪問着が「準礼装の代表」とされる理由です。

  • 使える場面 結婚式(ゲスト)・入学式・七五三・お宮参り・茶会・格調ある食事・観劇
  • 合わせる帯 袋帯が基本。場面に応じて名古屋帯も可
  • 紋について 紋なしでも準礼装として使える。一つ紋を入れると格が上がり略礼装〜準礼装の幅が広がる

詳細記事 ▶ 結婚式の着物の選び方 立場別(主催者・ゲスト・親族)の着物選びと絶対NGを詳しく解説

付下げ(つけさげ)——訪問着の一歩手前

訪問着に似ていますが、絵柄が縫い目をまたがず・上前(着たときに見える部分)を上に向けて染められているのが特徴です。訪問着より一段格が下がり、控えめに装いたい場面に向いています。

「自分が主役でない場面」「控えめに装いたい場面」での付下げは、むしろ「場の読める着こなし」として評価されます。

  • 使える場面 茶会・観劇・改まった食事・子供の行事(訪問着と同じ場面で控えめな選択として)
  • 合わせる帯 袋帯または格調ある名古屋帯

色無地(いろむじ)——紋で格が自在に変わる万能着

黒以外の単色で染められた、柄のない着物です。紋の数と帯の組み合わせによって正礼装から普段着まで格を自在に変えられる、着物の中で最も汎用性の高い一枚です。

  • 五つ紋+礼装袋帯 正礼装
  • 三つ紋+礼装袋帯 準礼装——格調ある茶会・式典に
  • 一つ紋+礼装袋帯または格調ある名古屋帯 略礼装——茶会・入学式・子供の行事・改まった食事に
  • 紋なし+名古屋帯・半幅帯 外出着——観劇・食事・稽古に

詳細記事 ▶ 色無地の色選び 茶道・慶弔・日常と幅広く活躍する色無地の色の選び方を詳しく解説

江戸小紋(えどこもん)——小紋の中の特別な存在

非常に細かい型染めで染められた小紋の一種です。遠目に見ると無地に見えるほどの精緻な文様が特徴です。小紋の中で最も格が高く、一つ紋を入れることで略礼装として使えます。

鮫・行儀・角通しの「江戸小紋三役」に一つ紋を入れると略礼装として認められます。

外出着——格とおしゃれの間

小紋(こもん)——外出着の代表

生地全体に繰り返し模様を型染めした着物です。着物の外出着の代表で、観劇・食事・お稽古・趣味の集まりなど幅広い場面で活躍します。紋は入れず、帯で雰囲気を変えて楽しみます。

  • 古典柄の小紋 カジュアルなパーティ・改まりすぎない茶会にも使える
  • モダン柄・個性的な柄 観劇・美術館・友人との食事など
  • 合わせる帯 名古屋帯・洒落袋帯・半幅帯(場面に応じて)

御召(おめし)——外出着で最も格が高い

先染めの着物(織りの着物)の中で最も格が高いのが御召です。縮緬の一種で、独特の風合いと落ち着いた光沢があります。徳川将軍が好んで着用したことから「御召」の名があります。

紋を入れることで略礼装として使える特殊な外出着です。

紬(つむぎ)——個性の外出着

絹の紬糸を使って織られた先染めの着物です。大島紬・結城紬・牛首紬など産地によって異なる表情を持ちます。独特の風合い・軽さ・着心地の良さで根強い人気があります。

紬はカジュアルな着物です。どれほど高価な紬でも、礼装の場(結婚式・式典など)には向きません。観劇・食事・稽古・日常のおしゃれとして楽しみます。

NG 大島紬が高価でも、結婚式の礼装の場には着ていけません。「高価=格が高い」ではない点が着物の格の特徴です。紬は外出着・普段着の素材です。

普段着——日常を彩る着物

木綿・ウール——丈夫で気軽な普段着

木綿・ウールの着物は手入れがしやすく丈夫で、日常着として最も実用的です。自宅でのくつろぎ・近所への外出・稽古着として活躍します。礼装の場には向きません。

浴衣(ゆかた)——夏の普段着

木綿や麻で作られた夏の普段着です。本来は風呂上がりに着る室内着でしたが、現代では夏祭り・花火大会・ビアガーデンなどのカジュアルな夏のお出かけ着として定着しています。

上質な浴衣に名古屋帯・草履を合わせると「夏の外出着」として少し格を上げた着こなしもできます。

帯の格——着物と帯の格を揃えることが最重要

着物の格と帯の格は必ず揃えてください。格の高い着物に格の低い帯を合わせると全体が崩れ、逆もまた然りです。

帯の種類合わせる着物
丸帯(まるおび)最高格花嫁衣装・黒留袖(婚礼)
礼装袋帯(ふくろおび)正礼装〜準礼装黒留袖・振袖・訪問着・色留袖・色無地(紋付)
洒落袋帯(しゃればふくろ)準礼装〜外出着付下げ・色無地・御召・小紋の改まった場
名古屋帯(なごやおび)略礼装〜外出着小紋・紬・外出着全般。格調ある名古屋帯は付下げ・色無地にも
半幅帯(はんはばおび)普段着・カジュアル浴衣・木綿・ウール・カジュアルな紬

「染めの着物(礼装)×袋帯」「織りの着物(外出着)×名古屋帯」という組み合わせを基本として頭に入れておくと、格外れのコーディネートを避けられます。

男性の着物の格

男性の着物も女性同様に格があります。

着物・装い使用場面
黒羽二重五つ紋付+袴正礼装(男性最高格)結婚式新郎・仲人
色紋付(五つ紋)+袴準礼装結婚式・披露宴
色紋付(三つ・一つ紋)略礼装改まった式典・茶会
紬・御召(袴あり)外出着観劇・食事・趣味の集まり
木綿・浴衣普段着日常・夏の外出

場面別・格の早見表

「この場面に何を着ていけばいいか」をすぐに確認できる早見表です。

場面立場・状況適した着物
結婚式・披露宴新郎新婦の母(既婚)黒留袖(五つ紋)
結婚式・披露宴新郎新婦の姉妹(未婚)振袖または五つ紋色留袖
結婚式・披露宴招待ゲスト(既婚)訪問着・三つ紋色留袖
結婚式・披露宴招待ゲスト(未婚)振袖・訪問着
葬儀・法事喪主・近親者黒紋付(五つ紋)+黒共帯
葬儀・法事参列者(一般)色無地(紫・紺など暗色)+黒帯
入学式・卒業式母親(保護者)訪問着・付下げ・一つ紋色無地
七五三・お宮参り母親訪問着・付下げ・色無地(一つ紋)
茶会(正式)社中・ゲスト色無地(一つ紋)・付下げ・訪問着
茶会(稽古)稽古着小紋・色無地(紋なし)・紬も可
観劇・コンサート普通の観劇小紋・紬・付下げ(場により)
観劇・コンサート特別公演・式典的な場訪問着・付下げ・洒落袋帯の小紋
食事会改まった食事付下げ・訪問着・格調ある小紋
食事会カジュアルな食事小紋・紬・御召
夏祭り・花火大会夏のカジュアル浴衣

よくある格の失敗——この3点を覚えるだけ

失敗1:結婚式の「格外れ」

最も多い失敗が、結婚式での格外れです。

NG 主催者側(親族)が準礼装・招待ゲストが正礼装——これは「場の格を超えてしまっている」状態。招待された側が主催者より格の高い着物を着るのは逆転が起きます。

原則として、招待ゲストの着物の格は「主催者側を超えない」ことが礼儀です。また白・黒一色は花嫁・喪服と被るためNGです。

失敗2:紬を礼装の場に着ていく

大島紬・結城紬などの高価な紬は、着物の世界では「普段着・外出着」に分類されます。価格がどれほど高くても、紬を結婚式・入学式など礼装の場に着ていくことは格外れです。

NG 高価な紬でも礼装の場には向かない。「高価=格が高い」ではなく、「染めか織りか」「用途の分類」が格を決める。

失敗3:帯の格が着物と合っていない

礼装の訪問着に半幅帯を合わせる・カジュアルな小紋に金糸たっぷりの礼装袋帯を合わせる——どちらも格外れです。

着物の格と帯の格は必ず揃える。これだけを守れば「帯の格外れ」はなくなります。

最後に——格は制約ではなく、着物を自由にする地図

着物の格を知ることは、着物を制限することではありません。

格を知ることで「何を着ていけばいいか」という迷いが消え・場に合った着物を選べる安心が生まれ・着物と付き合う自由が広がります。

  • 正礼装(黒留袖・振袖) 結婚式主催者側・最重要式典の最高格
  • 準礼装(色留袖・訪問着) 結婚式ゲスト・改まった式典の格調ある装い
  • 略礼装(付下げ・色無地一つ紋) 入学式・茶会・七五三・改まった食事の実用礼装
  • 外出着(小紋・紬) 観劇・食事・趣味のおしゃれを楽しむ着物
  • 普段着(木綿・浴衣) 日常と季節を気軽に楽しむ着物

着物選びでお困りのとき・格がわからないとき・どんな場面に何を着ればいいかのご相談は、奈良の老舗呉服店にどうぞ。着物を広げながら一緒に考えます。

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