着物はなぜ高いのか?呉服屋が本音でお話しします|染と呉服はっとり

「着物は高いですね」
呉服屋をしていると、この言葉をよく聞きます。
確かに洋服と比べると、着物は高く感じられるかもしれません。
しかしその理由を知ると、多くの方が驚かれます。
着物は単なる衣服ではなく、多くの職人の手仕事によって生まれる伝統工芸品だからです。
今回は、呉服屋の立場から「なぜ着物は高いのか」を正直にお話しします。
着物は一人では作れない
洋服は、工場で大量生産されることが多いですが、着物は違います。
一枚の着物が出来上がるまでには、いくつもの工程があり、それぞれに専門の職人が関わります。
ここでお話するのは、量産品のお着物ではなく、手仕事の逸品物と言われるお着物のことです。
例えば、訪問着や振袖などの染めの着物の場合、一般的に次のような工程があります。
- 絹糸を作る人
- 生地を織る人
- 下絵を描く人
- 糊を置く人
- 染める人
- 蒸す人
- 洗う人
- 金彩を入れる人
- 刺繍をする人
- 仕立てをする和裁士
一枚の着物に十人以上の職人が関わることも珍しくありません。
つまり着物の価格には、こうした職人たちの技術と時間が含まれているのです。
生地が特別である
着物の多くは「正絹(しょうけん)」という絹の生地で作られます。
絹は昔から高級素材として知られていますが、その理由は非常に手間がかかるからです。
蚕から糸を取り、細い糸を何本も合わせて織り上げる。
この工程には多くの時間と技術が必要です。
さらに着物は、**一反(約13メートル)**という長い生地を使います。
洋服よりもはるかに多くの布を使うことになります。
手作業の工程が多い
着物の染めは、今でも多くが手作業です。
例えば「手描き友禅」という技法では、職人が筆を使って一色ずつ染めていきます。
一枚の着物に、数ヶ月もかかることもあります。
「京鹿の子絞り」「辻が花染」「一珍・ろうけつ染」など実に多彩な細かい作業を有する
染め物が多く存在しています。
さらに
- 金箔
- 金彩
- 刺繍
などの装飾が加わると、制作期間はさらに長くなります。
このように着物は、時間をかけて作られるものなのです。
仕立てという工程
着物は買ってすぐ着るものではありません。
お客様の
- 身長
- 裄(ゆき)
- 袖丈
- 身幅
などに合わせて、和裁士が一枚ずつ仕立てます。
つまり着物は
オーダーメイドの衣服
でもあります。
この仕立ての技術も、長年の修行が必要な職人技です。
長く着られる衣服
ここが洋服との大きな違いです。
着物は
- 寸法直し
- 仕立て直し
- 染め替え
を行うことで、長く着ることができます。
実際に当店でも
祖母の着物を娘さんやお孫さんが着られるように
仕立て直すご相談をよくいただきます。
数十年前の着物が、再び袖を通される瞬間を見ると、
着物は単なる衣服ではなく、思い出を受け継ぐ文化だと感じます。
呉服屋として思うこと
着物は確かに安いものではありません。
しかしその背景には
- 多くの職人の技術
- 長い制作時間
- 上質な素材
- オーダーメイドの仕立て
があり膨大な時間を要しています。
着物が高いのは、その「手間にかかる時間」「職人の技術力」そのものだとお考え下さい。
それこそが、日本の伝統文化です。
そして何より、着物は
世代を越えて着ることができる衣服です。
一枚の着物が、母から娘へ、そして孫へと受け継がれる。
そんな場面に立ち会えることが、呉服屋としての大きな喜びでもあります。
もしご自宅に着物がありましたら、ぜひ一度広げてみてください。
そこには、作った職人の技術と、
着てきた人の想いが詰まっているかもしれません。
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