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三代にわたり着継がれる訪問着の物語|呉服店が語る着物の本当の価値

訪問着 貝桶に宝尽くし

着物は「三代着られる」と言われますが、実際に三代続けて着継ぐためには、生地の質・仕立て・保管状態など、いくつかの条件を満たす必要があります。 当店には「母や祖母の訪問着を娘にも着せたい」というご相談が年々増えており、状態を拝見しながら「直せる着物」「直すべきでない着物」を丁寧に判断しています。

この記事では、実際に三代にわたり着継がれた訪問着の実例をもとに、

  • どんな着物が三代着られるのか
  • 仕立て直しの判断基準
  • プロが見た“良い着物”の条件

を、呉服店の視点から分かりやすく解説します。

当店先々代のお客様の着物

着物の世界は、時間の流れが少しゆっくりしています。

流行の服のように「今年の流行」がすぐに消えてしまうものではなく、

十年、二十年、時には半世紀という時間を越えて、人から人へ受け継がれていきます。

呉服店という仕事をしていると、その時間の流れを目の前で見ることがあります。

懐かしい着物

今日は、三代にわたって着物を大切にしてくださっている、あるご家族のお話です。

ある日、一人のお客様が風呂敷包みを抱えてご来店されました。

中から出てきたのは、やわらかな色合いの薄イエローの上品な訪問着でした。
「これは、母が昔つくった着物なんです。」

よく見ると、古いながらも見覚えのある染めで、丁寧に仕立てられた着物でした。

お話を伺うと、お母様が若い頃、当店で誂えられた着物だといいます。

それは、先々代である祖父がお売りしたお着物でした。

卒業式や親戚のお祝いなど、人生の節目に「着やすい訪問着」

としてお召しになってこられた一枚です。

「今度、娘の卒業式があるので、この着物を着たいと思って。」

ニコニコしてお気に入りのお着物を肩にそっと掛けられました。

お嬢様に向けての仕立て直し?

早速にお着物を広げてその寸法を確認します。

やはり今の体型には少し合いません。

裄も短く、袖丈も短い、身丈も少し足りない、そこで、仕立て直しができるかを確認しながら、

生地の状態を丁寧に見ていきます。

幸い、状態はとても良く、仕立て直しをすれば十分着られる着物でした。

そしてお手入れを

お着物には大きなシミやカビ・汚れは付着しておらず、

お母様が大切に保管されていたことがよく分かります。

しかし経年で全体的に埃を吸っている感じがしました。

洗い張りをして反物に戻った時には、澄んだ薄いイエローが蘇ってきました。

表面の汚れが取り除かれると着物本来の艶と生地の良さが引き立ちます。

その後、お客様の寸法に合わせてお仕立てに出させていただきました。

仕立て上がりは、思った以上に丈が出てお客様にぴったりの着丈になりました。

呉服屋が一番ほっとする瞬間です。

■ この訪問着が三代着られた理由(呉服屋視点)

  • 生地がしっかりしている(糸の質・打ち込みの強さ)
  • 仕立てが丁寧で、縫い代が十分に残っている
  • 保管状態が良く、変色・カビ・弱りが少ない
  • 色柄が時代を超えて使える上品なもの

三代着られる着物には、必ず「技術的な根拠」があります。

■ 仕立て直しで行った工程

  • 洗い張り
  • しみ抜き
  • 裏地の交換
  • 仕立て(寸法いっぱいを利用して)

■ プロが見た「直せない着物」

  • 生地が弱っている(劣化や生地の裂け)
  • カビが深く浸透している
  • 変色が広範囲
  • 縫い代がほぼない

帯と小物のコーディネート

そして、お手持ちの帯では少し地味な感じになるので、着物とお顔写りを考えながら、

袋帯とのコーディネートを組み立てていきます。

着物は落ち着いた色合いですが、帯を少し華やかにすることで、

年齢に相応しく式典対応が可能になります。

お客様は鏡の前で合わせながら、嬉しそうにこう言われました。

「母もきっと喜びますね。」

何だかそこには、お母様がいらっしゃる様な気がしてなりませんでした。

お召しになった後のお手入れ

それからしばらくして、卒業式が終わった後に再びご来店されました。

「無事に着ることができました。娘も一緒に写真を撮りました。」

そして少し笑いながら、こう続けられました。

「実は娘が、この着物いいねって言うんです。将来着たいって。」

着物というのは不思議なもので、一度作るとそれで終わりではありません。

仕立て直しをしたり、帯を替えたりしながら、長い時間をかけて使い続けることができます。

そして気がつくと、親から子へ、さらにその次の世代へと受け継がれていくことがあります。

呉服店という仕事をしていると、こうした場面に度々と出会うことがあります。

祖母が作った着物を母が着て、そして娘がまた袖を通す。

三代にわたって同じ着物が家族の思い出に寄り添っていくのです

洋服ではなかなか起こらないことですが、着物では珍しいことではありません。

むしろ、昔からそうして使われてきました。

着物は一枚の布から作られているため、仕立て直しが出来、

寸法を変えながら長く着ることができるからです。

当店にも、五代にわたってお付き合いをいただいているお客様がいらっしゃいます。

曾祖母の代から着物を誂えてくださり、お母様がそれを大切に受け継ぎ、

そして今は娘さんが訪問着を選びに来られる。

そんなご家族を見るたびに、着物という文化の奥深さを感じます。

呉服店の仕事は、ただ着物を販売することではありません。

お客様の人生の節目に寄り添いながら、

着物を次の世代へとつないでいくお手伝いをすることでもあります。

そして、もし今お手元に古い着物があるなら、それはまだ役目を終えていないかもしれません。

少し手を入れれば、もう一度袖を通すことができるかもしれませんし、

もしかすると次の世代が着る日が来るかもしれません。

着物は、時間とともに価値が深まっていくものです。

そしてその時間の中に、家族の思い出も静かに重なっていきます。

呉服店として、その物語に少しでも関わることができるのは、

何よりありがたいことだと感じています。

そして、これからもそんな「お着物を大切に」して下さるお客様が増えて

いくことを切に願って止みません。

*ただし、ご注意いただきたいのは、三代に渡り着継げる着物は、「ほんもの」である事が必要です。

当店でお買い求めでないお着物を持ち込まれる場合は、高価な着物であっても、ごく希ではございますが、お仕立て替えをお受け出来ない場合もございます。

大切な着物について、気になることがあればいつでもご相談ください。
お母さまやお祖母さまの着物の状態確認、仕立て直し、帯合わせなど、
お一人おひとりの物語に寄り添いながら丁寧にお手伝いします。

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着物は素敵だけれど、どうしたらいいの?管理の仕方は?
何から始めればいいのか、さぁ困った。
皆さんお着物を日常にお召しになられないのでこんな疑問は当たり前のことです。
どうぞご相談下さいませ。一緒に考えさせていただきます。
呉服専門店は、そんな皆様の道先案内人となって差し上げます。

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