古い着物は残すべきか処分か|間違えると後悔する分かれ道|奈良 染と呉服はっとり

長く呉服屋をしていると、さまざまなご相談を受けます。
着物を新しく誂える方。
今の着物を直して娘に渡したい方。
昔の着物を直して着たい方。
そして、少し困った表情で来店される方。
その中には、こう言われる方もいらっしゃいます。
「もっと早く相談すればよかったです」
実は、着物に関する後悔の多くは、特別な失敗ではありません。
「知らなかったこと」から起きていることがほとんどなのです。
今日は、呉服屋として実際によく出会う「着物で後悔するケース」についてお話ししたいと思います。
タンスの着物を処分してしまった後悔
一番多いのは、このご相談です。
「着物を整理して、全部処分してしまったんです」
数年後、その方はこう言われます。
「娘の成人式に、母の振袖を着せてあげたかった」
実は、日本の多くの家には昔の着物が残っています。
祖母の着物。
母の振袖。
昔の訪問着。
こうした着物は、仕立て直しや寸法直しをすれば、
再び着られることも少なくありません。
しかし、そのことを知らないまま整理してしまい、
後から後悔する方もいらっしゃいます。
着物は洋服と違い、直して使える衣服です。
そのことがあまり知られていないのかもしれません。
寸法が合わないと思い込んでいた
次に多いのが、このケースです。
「母の着物はサイズが違うので着られないと思っていました」
確かに、体型が違えばそのままでは着にくい場合もあります。
しかし着物は、縫い込みがあることが多く、
裄(ゆき)や身丈を直せる場合も少なくありません。
実際にお店に持って来られると
「直せるんですね」
と驚かれることもよくあります。
着物は一度仕立てたら終わりではなく、
体型に合わせて直していく文化があります。
このことを知らずに「着られない」と思い込んでしまうのは、
とてももったいないことです。
良い着物ほど残っていることが多い
もう一つよくある話があります。
「古い着物だから価値はないと思います」とおっしゃる方は多いです。
しかし実際に拝見すると、驚くことがあります。
昔の着物には、今ではなかなか見られない良いものが多いからです。
しっかりした正絹の生地。
丁寧な染め。
格調ある柄。
特に昭和の頃に誂えられた着物には、職人の手仕事が多く残っています。
長い年月を経ても、美しさを失わない着物があるのです。
実際に奈良のお客様で、
「もう古いから処分しようか迷っているが、柄がとても素敵だし」と、
拝見すると、生地はしっかりしており、寸法も調整可能でした。
結果として、お嬢様が入学式で着用予定となっております。
着物は時間とともに価値が変わる衣服
洋服は、流行が変わると着なくなることが多いものです。
しかし着物は、少し事情が違います。
訪問着は入学式や卒業式で着られます。
黒留袖は結婚式で着られます。
振袖は成人式や結婚式で着られます。
人生の節目で、何度も登場する衣服です。
そして親から子へ受け継ぐこともできます。
そのため、着物は「時間とともに価値が変わる衣服」と言えるかもしれません。
奈良の家には着物が残っていることが多い
奈良という土地では、古い着物が残っている家も少なくありません。
奈良には
東大寺
春日大社
薬師寺
唐招提寺
大神神社
橿原神宮
など、長い歴史を持つ寺社が多く存在しています。
その文化と環境の中で、人生の節目を大切にする習慣も受け継がれてきました。
七五三
成人式
結婚式
こうした行事に着物が使われてきたため、タンスの中に着物が残っていることも多いのです。
着物で後悔しないために
もしご自宅に古い着物があるなら、すぐに処分してしまう前に、一度見直してみてください。
・仕立て直して着られる着物
・帯に仕立て替えられる着物
・次の世代に受け継げる着物
意外な価値が残っていることもあります。
呉服屋として長く着物を見てきましたが、後悔される方の多くは
「もっと早く知っていれば」
「もう少し早く動いていれば」
とおっしゃいます。
何度もこのブログ内でも触れていますが、
着物は、ただの衣服ではありません。
家族の思い出や時間が重なった、大切な一枚です。
もしタンスの奥に眠っている着物があれば、
それはまだ物語の途中かもしれません。
「早まらないで下さい」
その一言を残しておきます。
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