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30代からの着物選び|初めての「きちんとした一枚」をどう選ぶ?|奈良の老舗呉服店の考え方

お客様に寄り添う

「そろそろ、きちんとした着物を一枚、持っておいた方がいいのかなと思って」。

そう言って店の扉を開けてくださる方の多くが、30代のお客様です。

振袖でもなく、成人式でもなく、ご自身の意思で、ご自身のために、初めて着物と向き合う時期。

私の店では、そうしたご相談が30代のお客様に特に多くなってきたように感じております。

けれども、初めて着物を買うとき、多くの方が迷われます。

訪問着がいいのか、色無地がいいのか、付下げがいいのか。

入学式には何を着ればいいのか。結婚式には何を着ればいいのか。七五三の付き添いには、何を着ればいいのか。一枚あれば、どこまで着回せるのか。

そして、そもそも、どのくらいの予算を考えればいいのか。

インターネットで調べれば調べるほど、情報が増えて、かえって分からなくなることもございます。

私は、最初の一枚だからこそ、「これを買えば間違いありません」と決めてしまうのではなく、その方がこれからどのように着物と付き合っていきたいのかを伺うことが大切だと考えております。

昔の「お嫁入り支度」という文化

ひと昔前までは、女性が着物と本格的に向き合う最初の機会は、多くの場合「お嫁入り支度」でした。

結婚が決まると、ご実家がお嫁入り道具の一式として、留袖や訪問着、色無地といった着物を、一通り誂えるという習わしがございました。

母から娘へ、あるいは家から家へと、いわば型として決まった段取りの中で、着物が自然と手元に揃っていく時代があったのです。

けれども今は、そうした習わしそのものが、少しずつ姿を消しております。

結婚のかたちも、ご実家との距離感も、当時とは大きく変わりました。

「嫁入り支度として一式揃える」という前提そのものがなくなり、着物は、結婚してからご自身で、必要に応じて少しずつ整えていくものへと変わってきているのです。

誰かが揃えてくれる着物から、
自分で選び取る着物へ。

今の30代の方が初めて着物を選ぶときに感じる戸惑いには、こうした時代の変化も関係しているのかもしれません。

初めての着物選びで、多くの方が悩むこと

お嫁入り支度という後ろ盾がなくなった分、30代で初めて着物を考える方は、ゼロから一人で向き合わなければなりません。

「色無地と訪問着、何が違うのか分からない」

「お子様の入学式に何を着ればいいのか」

「一枚あればすべての場面に対応できるのか」

「予算はどのくらいが適正なのか」

――そうしたご不安を抱えて、ご来店くださる方がほとんどです。

中には、インターネットで一通り調べてから来られる方もいらっしゃいますが、情報が多すぎて、かえって何が正解か分からなくなってしまったと仰る方も少なくありません。

「間違った選び方をして、恥ずかしい思いをしたくない」。

そんなお気持ちが、皆様の奥底に共通してあるように感じます。

着物には、訪問着、色無地、付下げなど、それぞれに向いている場面がございます。

それぞれの違いについて詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。

【訪問着について詳しく読む】

【色無地について詳しく読む】

女将の心のうち

初めて着物と向き合う方の不安は、知識の不足からというより、「正解を一人で決めなければならない心細さ」から来ていることが多いように感じます。

だからこそ、まず知識をお伝えするより先に、その心細さに寄り添うことから始めたいと思っております。

女将がまず伺うこと

ご相談にいらしたお客様に、私がまず伺うのは、

「どのような場面で、着物をお召しになりたいですか」

という、ごく簡単な問いです。

お子様の入学式、ご友人の結婚式、これからの茶道のお稽古、あるいは特に決まった予定はないけれど「そろそろ一枚」というお気持ち。

理由は本当に様々で、その理由によって、お選びする着物の種類も、色も、格も、まったく違ってまいります。

次に伺うのは、これから先、どのくらいの頻度で、どのような場面まで見据えていらっしゃるかということです。

一枚で何役もこなせる着物を求めていらっしゃるのか、それとも、これから少しずつ場面ごとに揃えていくおつもりなのか。

この見通しによって、最初の一枚に何を選ぶべきかが、大きく変わってまいります。

そして、最初の一枚を考えているからといって、必ず新しい着物を買う必要があるとも思っておりません。

お母様やお祖母様から譲られた着物があれば、まず拝見することもございます。

実際に、私はお客様に「今は新しく買わなくてもよいのではないでしょうか」と申し上げることもございます。

「最初の一枚は、答えではなく、始まりです」

初めての一枚なら、訪問着・色無地・付下げのどれを選ぶ?

では、実際に初めて着物を買う場合、何を選べばよいのでしょうか。

代表的なものとして、訪問着、色無地、付下げがあります。

ただし、私は「30代だから訪問着」「初めてだから色無地」というように、年齢や「初めて」という条件だけで決めることはしておりません。

まずは、それぞれの特徴を知ったうえで、ご自身がどんな場面で着たいのかを考えることが大切です。

訪問着

結婚式やお子様の節目など、きちんとした場面に幅広く着ていきたい方には、訪問着が候補になります。

絵羽仕立てならではの華やかさと品格があり、帯や小物の合わせ方によって、装いの表情を変えることもできます。

「これから子どもの行事にも出たい」「きちんとした席にも着ていきたい」という方の場合、最初の一枚として訪問着を検討することが多くございます。

色無地

色無地は、一色で染め上げられた無地の着物です。

帯や小物の合わせ方によって雰囲気を変えやすく、控えめな装いを好まれる方に向いています。

紋を入れるかどうかなどによって、着用する場面も変わってまいります。

私は、一つ紋をお入れすることをお勧めすることが多いです。

色無地の色選びについて詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。

【色無地の色選び】

付下げ

訪問着ほど華やかすぎず、それでいてきちんとした装いをしたいという方には、付下げが候補になることもございます。

お子様の行事や食事会など、日々の中で着物を楽しみたい方にとって、選択肢の一つになります。

このように、最初の一枚に向いている着物は一つではありません。

大切なのは、「何を買うか」より先に、「何のために着るのか」を考えることです。

一枚だけ選ぶなら、何を基準に考える?

初めての着物を一枚選ぶとき、私は次のようなことを大切にしております。

1.どこへ着ていくのか

まずは、実際に着る場面を考えます。

入学式なのか、結婚式なのか、お稽古なのか、それとも特別な予定はないけれど、これから着物を楽しんでいきたいのか。

目的によって、必要な着物の種類や格は変わります。

2.これから何年着たいのか

「今の自分に似合う」だけではなく、10年後、20年後にもお召しいただけるか。

最初の一枚だからこそ、目先の流行だけで決めないことも大切です。

3.すでに何を持っているのか

お母様やお祖母様から譲られた着物や帯がある場合は、それも大切な判断材料です。

新しく買う前に、一度お手持ちのものを拝見することで、「実はこれが使える」ということもございます。

4.帯や小物をどう合わせるのか

着物だけを見て決めるのではなく、帯や帯締め、帯揚げなどを合わせたときに、その方らしい装いになるかどうか。

着物は一枚だけで完成するものではありません。

5.無理のない予算なのか

高価な着物を選べば、それだけで良いということでもありません。

その価格に見合う品質なのか、長くお召しいただける品なのか、ご自身が納得して購入できるものなのか。

そこまで含めて考えることが大切だと思っております。

着物の価格と品質について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。

【着物は、なぜ高いのか?】

入学式や結婚式には、どんな着物を選べばいい?

「初めて着物を買いたい」とご相談に来られる方の中には、お子様の入学式や卒業式、ご友人の結婚式など、具体的な予定をきっかけにされる方もいらっしゃいます。

こうした場合には、「30代だから何を着る」という考え方ではなく、まずその場の性格を考えます。

お子様の節目の行事なのか、親族として出席する結婚式なのか、ご友人の結婚式なのか。

同じ「きちんとした場」でも、立場や会場、時間帯などによって、ふさわしい装いは変わってまいります。

だからこそ、「一枚あれば全部に着られる着物」を探すだけではなく、その方が実際にどこへ着ていくのかを伺って選ぶことが大切なのです。

お子様の行事など、具体的な場面での着物選びについては、こちらの記事も参考になさってください。

【入学式・卒業式などの着物について】

TPOと予算、そして「これから」を見据えた一枚

30代で初めて着物を誂える方の場合、私は訪問着を候補の一つとして考えることが多くございます。汎用性が高く、さまざまな場面にお召しいただきやすいためです。

もちろん、すべての方に訪問着をお勧めするわけではありません。

これからどんな場面で着るのかを伺ったうえで、最初の一枚として訪問着が適していると判断することが多い、ということです。

訪問着は、絵羽仕立てならではの品格があり、慶事の装いとして幅広い場面に対応できるからです。

柄付けは、後ろ身頃にすっと流れるような、動きのある構図をお勧めしております。

静止した柄よりも、体の動きに合わせて表情が生まれ、所作そのものを美しく見せてくれるためです。

地色や柄の題材は、既製の型に当てはめるのではなく、その方らしさが自然と表れるよう、ご本人様のお好みを丁寧に伺いながら決めてまいります。

私自身、30代のお客様には薄水色やベージュ系をご提案することがございます。

強い色ですと肌の方が引っ張られてしまうことがありますが、薄く淡い色であれば、肌の透明感を引き立てながら、涼やかな清潔感を添えてくれるためです。

ただし、お顔立ちや肌映りによって似合う色は異なりますので、年代だけで決めつけることはいたしません。

実際にお顔の下でお当ていただきながら、その方に本当に似合う色を、一緒に見極めてまいります。

薄水色やベージュ系の色にはもう一つ、大きな利点がございます。

トレンドに左右されにくく、息の長い色だということです。

流行色というのは数年で移り変わっていきますが、このような淡く静かな色は、10年後、20年後にお召しになっても、古さを感じさせません。

今の自分に似合うだけでなく、この先何十年とお付き合いいただける色を選んでおくことが、最初の一枚には特に大切だと考えております。

30代の訪問着の地色 おすすめの色

初めて着物を買うとき、予算はどう考える?

予算につきましても、正直にお伝えするようにしております。

最初から無理をして一式を揃える必要はありません。

まずは一枚、長くお使いいただける質のものを選び、必要に応じて帯や小物を少しずつ整えていく。

そうしたご提案をさせていただくことで、多くの方が肩の力を抜いて、着物選びを楽しんでくださるようになります。

「着物は一式揃えなければならない」と思ってしまうと、初めての方ほど大きな負担に感じてしまいます。

着物、帯、長襦袢、帯締め、帯揚げなど、必要なものを一度に全部揃える場合もあれば、すでにお持ちのものを活かして、必要なものだけを整える場合もございます。

大切なのは、最初から無理をすることではなく、その方にとって本当に必要なものを見極めることです。

着物の価格について、「高い着物と安い着物は何が違うのか」と疑問に思われる方はこちらもご覧ください。

【高い着物と安い着物はどう違う?】

既製品と誂え、どちらを選べばいい?

初めて着物を買うときには、「既製品を選ぶのか、それとも自分のために誂えるのか」という迷いもございます。

既製品には、すぐに実物を見て選べる良さがあります。

一方、誂えの場合は、その方の体型に合わせて仕立てるだけではなく、着る場面やお好み、色、柄、帯との組み合わせまで考えながら、一枚を作っていくことができます。

特に、これから長く着物をお召しになりたいと考えていらっしゃる方には、「何を買うか」だけではなく、「どのような一枚を自分のために作るのか」という視点も大切だと思っております。

誂えについて詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

【着物を誂える完全ガイド】

着物は、これからの人生を彩る「支度」

昔の「お嫁入り支度」は、結婚という一つの区切りに向けて、あらかじめ揃えられる支度でございました。

今、30代で着物と向き合う方々がなさっているのは、それとは主体が違う支度です。

ご実家や慣習ではなく、ご自身の判断で、ご自身の暮らしに合わせて整えていく。

決まった型がない分、自由でもあり、心細くもある――そんな新しい形の支度だと感じております。

型がないということは、裏を返せば、その方らしい選び方ができるということでもあります。

だからこそ、最初の一枚は、単なる「洋服とは違う特別な服」ではなく、これからの人生の中で何度も袖を通していく、一つの支度なのだと思います。

母や祖母の着物があるなら、買う前に一度ご相談ください

初めて着物を買おうと思ったとき、最初から「新しい着物を買わなければ」と考える必要はありません。

お母様やお祖母様から譲られた着物があるなら、まずそれを活かせるかどうかを考えてみる。

サイズが合うのか。

今の自分が着たいと思えるものなのか。

帯や小物を変えれば、もう一度着られるものなのか。

お手入れや仕立て直しをすれば、これから先も大切に着られるものなのか。

そうしたことを一つずつ整理したうえで、それでも新しい一枚が必要であれば、そのときに選べばよいのです。

はっとりでは、新しい着物をお勧めする前に、お手持ちの着物を拝見することもございます。

「買うか、買わないか」から一緒に考えることも、着物を扱う店の大切な仕事だと私は考えております。

女将の心のうち

初めて着物を選ぶ方にとって、一番難しいのは、着物の種類を覚えることではないのかもしれません。

「自分の場合は、何を選べばいいのだろう」

その答えを、一人で決めなければならないことなのだと思います。

実際に、「自分では何を選べばいいのか分からないので、女将さんに選んでほしい」とご来店くださるお客様もいらっしゃいます。

そのようなとき、私が大切にしているのは、単に似合う着物を選ぶことだけではありません。

その方が、これからどんな場面で着物をお召しになるのか。

どんなふうに着物と付き合っていきたいのか。

そして、今、本当に買う必要があるのか。

そこまで一緒に考えることです。

私の役目は、正解を押しつけることではなく、選択肢を整理し、その方が納得して決められる状態までお連れすることだと思っております。

女将より

着物選びに、正解は一つではございません。

大切なのは、ご自身のこれからの日々に寄り添う一枚を、焦らず選んでいただくことです。

染と呉服はっとりでは、振袖・訪問着・礼装着物・帯のお誂えから、着物選びのご相談まで承っております。

「何を選べばよいのかわからない」という段階からでも、どうぞご相談ください。

四代目女将が、お召しになる場面やこれからの着物との付き合い方を伺いながら、一緒に一枚を選んでまいります。

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何から始めればいいのか、さぁ困った。
皆さんお着物を日常にお召しになられないのでこんな疑問は当たり前のことです。
どうぞご相談下さいませ。一緒に考えさせていただきます。
呉服専門店は、そんな皆様の道先案内人となって差し上げます。

奈良県の北西部近鉄線学園前駅徒歩2分。
閑静な高級住宅街で有名な学園北のお屋敷街の中に
ひっそりとたたずむ知る人ぞ知る隠れ家呉服店です。

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